先生と外部が協働して一つの授業を作る
それが大きな効果を生み出す

工藤私たちもそうですが、今、いろいろな企業や団体が出張授業のプログラムを用意して、学校や先生にアプローチをしています。学習指導要領の改訂も踏まえ、学校側としてはどういったプログラムだと受け入れやすいのでしょうか?
また、授業との相乗効果が生まれやすいカタチとは、どんなものでしょうか?

長田今回の改訂では、いわゆるアクティブ・ラーニング、主体的・対話的で深い学びがメインになっています。そうなると、50分の授業をそのまま民間の方にあずけるというよりは、教師が全体を主導して、ポイントを民間の方にお願いする。50分の中で役割分担がうまくできるようなものがいいと思います。
生徒が「この時間、ウチの先生は何もしなかった」と思うのではなく、先生の授業の中に民間の方がコンタクトしているような作り込みがあると、取り入れやすいのではないでしょうか。

工藤50分の授業の中で、先生と呼吸をあわせながら連携していくためには、準備に時間がかかりますし、難易度がぐっと上がると思うのですが。

長田そうですね。いくつかパターンはあると思いますが、先生側から「こんな授業をしたいので、ここを協力してください」という依頼があれば理想的です。
でも、そういう先生はあまりいないですよね。だから逆にプログラムを作っていく中で、先生にここをお願いしたいという部分をプログラムに入れ込んでおく。ある意味、先生の活躍の場面を設定していただくことから始めるといいんじゃないかと思います。

工藤MoneyConnection®は、50分の授業をまるごとあずけていただいて実施しているのですが、先生方の関わり方もさまざまでして。授業中に教室を離れてしまう先生もいらっしゃいますし、「何をしたらいいですか?」と積極的に関わってくださる先生もいらっしゃいます。
先生が積極的に関わってくださる場合、事前の情報共有が十分でないと、うまくいかないこともあるんです。例えば、MoneyConnection®は「価値観を押し付けない」ことをポリシーにしているのですが、先生がご自身の価値観を話してかみ合わなくなってしまうことあります。逆に先生が一緒にプログラムを体験しながら、生徒の意見を引き出してくださった時は、とてもうまくいくんです。
私たちが「価値観を押し付けない」というプログラムのポリシーを先生にどうお伝えするか。私たちを先生に受け入れていただくためには何をする必要があるのかについて、アドバイスをいただきたいのですが。

長田何度かプログラムを経験して顔なじみになっていれば、かみ合わないということはないと思いますが、初見だとどうしてもそういうことが起きますよね。
コーディネーターがいる学校だと違うかもしれませんが、日本の教員はまだまだ外部の方と連携して授業を作っていくことに慣れていないんです。だから、もうちょっと我慢の時間が必要だろうと、私は思います。
ただ、若い教員は比較的慣れてきています。特に進路が多様な高校では、地域の課題解決をする学習をしたり、民間の方を招いてリアルな姿を見せるという取り組みも始まっているので、若い教員はプログラムにすっと入ってこれるようになってくると思います。
今は悩ましいことも多いと思いますが、もう少し我慢していただいて、お付き合いいただければと思います。

工藤先生方も思いを持って指導にあたっていらっしゃるので、生徒と接する外部の人間に求めるものも、いろいろあると思います。私たちが学校に出入りする時の心構えや、先生方が安心してお願いできると感じる人物像などはあるのでしょうか?

長田かっこいい話や成功体験ばかりでなく、うまくいかないことや心配に思っていることを正直に言っていただいていいと思います。これは多分、多くの教員がそう思っていると思いますね。
そもそも教員は、誰かに相談されたり正直に悩みを打ち明けられると、守ってあげよう・支えてあげようと思うんですよね。だから「完成されたプログラムです!」「おまかせください!」と言うよりは、「こういうことが心配ですが大丈夫でしょうか?」「こんな生徒はいませんか?」など、不安なことはちゃんと伝え、正直に教員と接していただいた方がいいと思います。
おそらく子どもたちも同じで、完璧・完全な先生よりも、先生のドキドキ感が伝わったり、誠実そうだったり、心配に見えると、この人を助けてあげたいと思うようになるんですよね。
だから、あまり肩肘をはらずに学校に行っていただいていいんじゃないかと思います。

工藤今の言葉は、学校と連携する上の心構えとして、とても大切なポイントだと思います。子どもたちのためにという思いがあっても、それが空回りして、なかなか距離が縮められないこともあるんですよね。

長田私もそうでした。もっと早く地域や民間の方と連携していればと、今は反省しているんです。若い時にチャンスは何度もあったのですが、その頃は「目の前の子どもたちは自分が指導するんだ」というヘンな熱い思いを持っていて。誰かの手を借りたら負けなんじゃないかと思っていたんです。
それを変えたのは、中学校教諭だった頃の出来事でした。3年生の担任をしていた時、小学校の頃から不登校の生徒を受け持ったんです。その子は不登校だけど、やっぱり受験は気になるので週に1度だけプリントを持ち帰ったり、提出物を出しにくるんです。それも私が絶対に職員室にいない時をねらって来るんですね。家庭訪問に行っても、絶対に出てきませんし。
ところが、学校にイケメンの大学生がボランティアで来るようになってから、この子は半日ずつ学校に来るようになったんですよ。ずっと、ある意味ポリシーをもって不登校だった子が、イケメン大学生に会うという理由をみつけて、学校に来るようになったんです。学校に行く・行かないことの善し悪しは別として、子どもに勇気ある一歩を踏み出させたのは、私ではなく外部の大学生だったんです。それまでの私は、全部自分でやろうとして「大学生なんかに俺の仕事の替わりができるか」と思っていたのですが、本当に彼には助けられました。
子どもたちへの教育も人づくりも、壁を作らずいろんな人と一緒にしていくべきなんです。
私はこの経験をしたことで、外部の専門家や民間の人にどんどんアプローチするようになりました。だからぜひ、若い教員にも成功体験を積ませたいと思っているんです。

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