先生自身が成功体験を積むことが、
地域や民間との協働を進める原動力になる

工藤学校と地域・民間との協働を実現するためには、先生方に時間をいただいて理解を深めていくことが必要になってきます。でも、先生方の忙しさを考えると、私たちも遠慮してしまうんですよね。
学校や先生方の負担となる時間的なコストを抑えつつ、連携を強化していくためには、どうすればいいか。そのために、私たちのような外部から何ができるのかを知っておかないと、先生方に「また来たか」と思われてしまうんじゃなかと思いまして。ぜひアドバイスをいただきたいのですが。

長田学校に関して言うと、今、コミュニティスクールや学校支援地域本部と呼ばれる組織がありまして、学校外のコーディネーターが学校に入っている場合があります。コーディネーターとして活動しているのは、元PTAの役員の方や子どもが卒業してある程度時間に余裕がある方など。自治体によってはコーディネーターを雇用しているケースもあります。
基本的にコーディネーターの方が先生方や外部の方との調整をしたり、マッチングしてくださるので、学校の先生が外部の方と直接連絡したり、連携をとったりすることはまずないんですね。
私が仙台市教育委員会の指導主事だった頃…12年くらい前に3つの学校にコーディネーターを派遣したのですが、今年は140校にまで増えています。再来年には、小学校120校、中学校63校の全校配置を目指しているようです。こういう自治体は仙台市の他にもたくさんありますし、この取り組みを進めていくことで、学校や先生方の負担を減らすことができるのではないでしょうか。

工藤なるほど。

長田また、若い教員のうちに成功体験を積んで「やってよかった」と思うと、苦労を苦労だと思わなくなるんですよね。ある程度ベテランになってしまうと、なぜそんな大変なことをしなきゃいけないの?と考えてしまいがちです。でも若いうちに成功体験を積むと、外部との連携は、不可欠なもの・ぜひともやらなければならないものとなる。その気持ちを大事にしたいと思っています。
ただ、学校はずっと地域や民間と距離があったので、その文化をすぐに変えることは難しいと思うんです。でも、先生は真面目ですから、子どもの表情が変わったり、教育効果が上がることが分かると、多少煩雑でも手間がかかっても「やろう」というエンジンがかかります。
だから民間の方には、学校に入っていき、教員が若いうちに成功体験を積ませて欲しいと思っています。最初は嫌がられたり、行きづらいと思うことがあるかもしれませんが、一度成功体験を積ませれば、その後は学校側から積極的に連絡してくるはずですから。

工藤連絡の方法にも一つどうかと思うことがありまして。若い教員の方とお話することもあるのですが、学校としての正式なメールアドレスをお持ちでない方がほとんどなんですよね。だから連絡手段が電話やファックス、手紙になってしまう。コミュニケーションのコストがかかるなといつも思っているのですが。

長田そうなんですよ。まず情報機器が整備されていませんし、整備されていたとしても、学校の教員は子どもたちが帰るまでメールのチェックができないんです。だから、中学校や高校だと7時か8時くらいから1日のメールを処理しなければならなくなる。それが大変だという人もいると思います。
それでもシステムが整っていればいいと思いますが、一人に1台パソコンがない職員室もあります。そうなるとメールでの連絡はできませんし、夕方以降の電話連絡しかつないという悲惨な状況になる。ここは変えていなければならないと思っています。

工藤電子機器やデバイスを使った授業が当たり前のようになっていく中で、先生自身が日常的に使っていないものを教えるのは大変だと思うんですよね。せめて仕事で、学校で使っていればやりやすくなるのかなと思うのですが。

長田そうですね。今の小中高校生は、情報機器についてはネイティブ。生まれた時から自然に使っていますよね。ところが40代・50代の教員は、大人になってから情報機器に触れ、未だに使いこなせていない状態ですから。教室でタブレットを渡すと、子どもたちの方が器用に使って、先生が「待て!待て!」と慌てたりということもあるでしょうね。

工藤中学校・高校で、人型ロボットのペッパーを使ってプログラミングを学ぶ授業を行ったことがあるんです。子どもたちは胸の部分にタブレットがあることを知っているので、YouTubeを流して踊ったりしているんですけど、先生はおろおろしてしまって。

長田大人が子どもに教えられる場面ですね。でもそれでいいと思うんです。例えば、プログラミングが得意な子がいたら、その子を教師役にしてみる。先生は少しおどけて「そうなのか」って生徒役になればいいだけなんです。

工藤先生は全部知っていなければならないということではなく、知っている人が教える。教えられた側も教える側になることで、また何かできることがあるのではないでしょうか。

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