今の学びのすべてが将来につながる
それを子どもたちに伝える授業作りを

工藤私たちは中学校や高校で、学習支援や生活支援を行っていまして。高校に関して言うと、学校に入って教科指導やカウンセリングを行ったり、金銭教育である「MoneyConnection®」を実施することが多いのですが、いわゆる進路多様校からの依頼が圧倒的に多いんです。学校が開かれた教育を取り入れようとしても、ほとんどの生徒が有名大学に進学するような高校の場合、目指す資質・能力を考えると、優先順位は下がってしまうのかなと。逆に進路多様校の場合は優先順位が高いので、声をかけていただいているのだと思っています。
また、MoneyConnection®に関しては、家庭科や社会科の消費者教育の一環としてお声がけいただくことが非常に多いんです。
国語・数学・英語などの科目については、開かれた教育や外部との連携が難しい部分もあるのかもしれないと思うのですが、科目によっての違いはありますでしょうか?学習指導要領の改訂を見た時、家庭科の先生と英語の先生が感じることには、やはり違いがあるのではないかと思うのですが。

長田今回の学習指導要領の総則には、小学校・中学校・高校ともに「キャリア教育の充実」という言葉が入っているんです。総則に入っているということは「すべての教科・科目にわたってキャリア教育を行う」ということを意味します。
キャリア教育は、先ほど工藤さんがおっしゃった通り、どうしても勤労感・職業感に目が行きがちですが、それはキャリア教育の一部。キャリア教育の大事なポイントは、今の学びや努力が、将来のキャリア形成や社会作りにどうつながっていくかということを、子どもたちに認識させることなんです。
そう考えると、確かに家庭科や社会科は直結しますよね。お金の使い方や納税の大切さ、あるいは子育ての苦労や喜びなどを、外部の方と連携して直接教えることは非常に重要ですし、やりやすいと思います。
しかし、国語や数学も社会で生きていくためには非常に大事な教科なんです。例えば、国語の漢文の中には、新聞の三行広告の要素がギュッとつまっていますよね。また、修学旅行の自由行動の時、どのルート・どの交通機関を使えば一番合理的かということは一次関数を使えば分かるんです。
これはほんの一例ですが、先生方には「どんな教科も、あなたが生きていく上で、よりよい社会を作っていく上で大切なものなんだ」ということを意識した授業づくりをして欲しいと思っています。

工藤先生以外の人が言うことで、子どもたちの心に響くこともあるのかなと私は思っていまして。高校に行って感じるのは、進路多様校にいけばいくほど、先生が子どもたちにとって、家族に近い存在なのかもしれないということ。先生が意識していなくても、親がいない子どもにとっては、代替的にそうなってしまうことがあると思うんです。
家族のような近い存在である先生の前では、普段ダラダラしている生徒も、外部からの講師の話はちゃんと聞いてくれたり、ちゃんと聞くフリをしてくれるんですよね。
なぜ勉強しなきゃいけなのかという話を親から言われると腹が立つけれど、近所のおじさんから言われるとちょっと心に響いたりすることがあったり。親や先生じゃない人だからこそできることがあって、それが重要なんじゃないかと思うんです。
外部からの講師については、どう思われますか?

長田親は総じて近い存在ですし、評価されたり叱られたりする「縦の関係」、友だちは「横の関係」。子どもたちが、縦でも横でもない「斜めの関係」の大人とどれくらい接することができるか。これが私はポイントだと思っています。
また、リアルな姿を見せることも大切です。本やメディアも参考にはなりますが、やはり今仕事をしている人や何か一つの物事に情熱を傾けている人に、ちょっと会っただけで違いますよね。それまでグタグダしていた生徒も、ゲストティーチャーが入ってきた瞬間に、ハッと顔が上がりますから。
ただ、ゲストティーチャーがただ50分話しているだけでは、また生徒は緩んでしまいます。やはり先生が、地域や民間の方とどのように協働して、どのように生徒に見せていくかという仕掛けをすることが必要です。その仕掛けがうまくいけば、リアルな人との出会いは子どもたちにとって、大きな財産になると思いますよ。

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