学習指導要領の改訂で
学びはどう変わる?

学習指導要領の改訂を受け、学校教育は
大きな変化の時期を迎えています。
今後の学びはどう変わるのか?
学校現場が抱える課題は?
若者の教育に深く関わる
二人の対談から探っていきます。

PROFILE

目次
  1. 身につけさせたい資質・能力を意識し、多彩な学び方を体験させる
  2. 学校と地域・民間が理念を共有し、協働することで生まれる「開かれた学び」
  3. 今の学びのすべてが将来につながる。それを子どもたちに伝える授業作りを
  4. 先生自身が成功体験を積むことが、地域や民間との協働を進める原動力になる
  5. 先生と外部が協働して一つの授業を作る。それが大きな効果を生み出す
  6. 体験できることの選択肢を広げる。バーチャルテクノロジーの可能性
  7. 自分の価値観と向き合い、価値観を上書きしていくこともキャリア教育

身につけさせたい資質・能力を意識し、
多彩な学び方を体験させる

工藤私たちのように、「学校の中」ではなく「学校の外」にいる人間にとっても、今回の学習指導要領の改訂は大きな変化だと思います。まず、今回の改訂のポイントについて、詳しく教えていただきたいのですが。

長田そもそも学習指導要領は戦後、全国の教育の水準を保つために、大綱的な基準として定められたものなんです。この「大綱的」ということが非常に重要でして。全国一律で同じ教育ができるかというと、できないんですよ。子どもは一人ひとり違いますし、地域の実情も違いますから、最終的にはそれぞれの学校(校長先生)に裁量が与えられています。つまり、子どもたちに身につけさせたい力や、こんな児童に育って欲しいという教育課程の編成権は、校長先生にあるんです。ただし、ある程度の基準を決めておかないと、学校や教育の格差が生まれてしまう可能性がありますよね。それを防ぐために定められたのが、学習指導要領なんです。
これまで、我が国の学習指導要領は「何を学ぶか」ということは、とても丁寧に整理されてきました。しかし、その一方「どんなことができるようになるのか」、いわゆる「資質・能力」や「どう学ぶのか」という「学び方」については系統的に整理されてこなかったんです。
今回は、この教育を受けることで、何ができるようになるかという「資質・能力」、そしてどのように学ぶのかという「学び方」について整理をした、ということです。

工藤学習指導要領の改訂は、もちろん子どもたちのためだと思いますが、改訂によって教える側である先生方も影響を受けると思います。改訂による先生方の混乱は、どの程度見込まれているのでしょうか?
また、現状、アクティブ・ラーニングに熱心に取り組んでいる先生もいれば、旧来型の黒板・チョークといった授業をしている先生もいる。その善し悪しはさておき、学習指導要領で「学び方」が提示されると、これまでと真逆の教え方を求められる可能性があると思います。先生方の混乱を最適化するために、今後どのような取り組みが必要になってくるとお考えですか?

長田おそらく今、全国の多くの小学校では、いわゆるアクティブ・ラーニングと言われる子どもたち同士が学び合い、主体性を重視する教育が行われていると思われます。
一方、中学校や高校は出口に入学試験や入社試験があるため、偏差値重視になりがちです。そのため、暗記型・再生型・教授型の授業が続くという問題がありました。
もちろん、教授型の授業がダメというわけではなく、そういう授業も必要です。しかし、教授型の授業が1年間ずっと続くのは、やっぱり苦しい。学びの楽しさや知識・技能が身につく喜びを実感させられるのかというと、難しいと思います。
だから教育のプロである先生が、1年間や単元の流れを通じて、子どもたちにいろいろな学びを体験させてあげることを、意識することが必要になってくると思うんですよね。

工藤ちょうど、私の子どもが小学生になりまして。通っているのは1学年1クラスしかない小さな小学校なのですが、そのまま地元で進学すると近くの大型小学校の子たちと同じ中学校に通うことになるんです。少人数でのびのびと育った子どもが、大型小学校の波に飲み込まれてしまう。それを避けるためには、私立中学に行くか、近くの中高一貫校に行くしかないんです。だからお母さん方は、中高一貫校に行かせるためには小学校4年生になったらこの塾に通った方がいいというような情報交換をしているんですよね。
学校側が学習指導要領の改訂を受けて変わったとしても、保護者側はEXIT(出口)を意識している人が多いという現状があり、私自身、一人の親として混乱が起こっているんです。だから、学校とPTAと地域の人がビジョンを共有しないと、子どもも混乱してしまうと思うんですよね。
進学が当たり前というエリアなら、EXITが入学試験ということは現状変わらない。その中で、保護者と子どもの思いを先生が最適化しようとすると、受験特化型になってしまうことがあるのかな、と思ってしまうのですが。
今回の改訂によって学び方が変わってくる中で、全体のカリキュラムはどのように変わって行きますか?

長田大きな変更点は小学校に「外国語科」が導入されることですね。
また、高校の授業では科目が再編されて、新しい科目の「公共」が立ち上がったり、○○探求といった探求型の授業が多用されています。この2つが大きなポイントですね。

工藤新しい科目は、今までのどの科目に置き換わるのでしょうか?

長田高校の場合は科目の再編です。例えば、これまでの「現代社会」が新科目の「公共」に変わるので、時間数が増えるということはないんです。
ただ、小学校の「外国語科」「外国語活動」は時間増なんですよね。そこをどう対応するか…。期限付きで総合的な学習の時間などとのやり繰りができるようになっていますが、少なくとも週1時間については学校で工夫しなければならず、ここは今後の大きな課題でもあります。

工藤先生方も試行錯誤しながら、ベストプラクティスを共有しながら、自分の学校・エリアでは、どういうものがいいのか探していくというイメージですか?

長田そうですね。

工藤だいたい何年くらいで落ち着くものでしょうか?

長田学習指導要領は、世の中の動きにあわせて、だいたい10年に1度くらい改訂されています。改訂から2〜3年でいろいろな工夫や検討があり、4〜5年である程度定着。そしてまた次の改訂へ、ということになります。

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